裏側矯正のメリット・デメリットと知っておくべき知識まとめ

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歯並びが気になっていても治療に踏み切れない大きな理由の一つとして「矯正装置の見た目」を挙げる人は多いのではないでしょうか。そこで最近特に大人の矯正で増えてきているのが歯の裏側に装置をつける矯正治療(舌側矯正)です。

歯の裏側は歯医者からも見えにくいため治療が難しく、症例が限られる、治療期間が長くなるなどのデメリットが指摘されていましたが、現在では治療技術や材料の進歩により適切に治療をすれば表側に装置をつける矯正と遜色ない治療結果が得られるようになってきています。

仕事上の理由などで装置の見た目が気になる大人には特におすすめの治療法だと思います。ここでは裏側矯正のメリット・デメリットだけでなく、具体的な治療ステップや歯科医院の選び方までご紹介します。

1.裏側矯正の5つのメリット

1-1.目立たない

最大のメリットと言えます。よほど口を大きく開いて近づいて見ない限りは装置がつけているのは外からは見えません。接客業や営業など人とよく会う仕事をしている方には特におすすめと言えます。

1-2.舌癖を矯正しやすい

歯並びが悪くなる原因の一つとして舌で前歯を裏から押してしまう、舌の位置が低いなどの舌癖があります。通常矯正治療を行う際はこの舌癖も治すトレーニングを並行して行うことになりますが、歯の裏側に装置をつけるとその部分に舌を置きづらくなるので自然と舌癖の矯正が行えます。

1-3.虫歯になりにくい

ワイヤー装置を使った矯正のデメリットとして装置の周りが虫歯になりやすいことがあげられます。裏側矯正の場合にも同様のことが言えますが、歯の裏側は虫歯予防において重要な唾液が常に循環しているので虫歯のリスクは低くなると言えます。

しかし歯の裏側を磨くのが苦手な方もいますので油断は禁物。歯磨きなどの丁寧なホームケアは必須です。

1-4.口内炎になりにくい

歯の表側にワイヤー装置をつけるとどうしても頬の裏側に装置が当たることで傷ができ、そこから口内炎になることが少なくありません。裏側に装置をつけると頬側にはまったく装置が当たりませんので口内炎のリスクはほとんどありません。

1-5.治療中でもホワイトニングができる

歯科医院で行うオフィスホワイトニングは前歯の表面に薬剤を塗って歯を白くしていくので歯の表側にワイヤー装置をつけているとできませんが、裏側矯正であれば問題ありません。

※マウスピースをつけて自宅で行うホームホワイトニングはできません。

2.裏側矯正の治療例

2-1.出っ歯

裏側矯正はその構造上出っ歯の矯正に特に適した治療方法です。また、先述した通り、出っ歯の原因となる舌で前歯を押し出す癖を自然と治しやすいので、治療後の後戻りもしにくく経過が良好だと言われています。

2-2.受け口

裏側矯正でも表からの矯正と同様に治療が可能です。顎の突出感も改善するための外科手術を行う場合でも裏側矯正はできますが、顎全体に問題があると診断され保険適用による治療を行う場合は制度上の規定で表側からの矯正しかできません。

2-3.乱ぐい歯

叢生とも言います。このように歯の移動が大きく複雑な症例の場合は、歯医者さんによっては裏側矯正では難しいと断られることもあるようです。しかしながら技術や装置の発展により、しっかりと経験のある先生なら問題なく治療が可能です。

3.裏側矯正の具体的な治療ステップ

基本的には表側にワイヤーをつける一般的な矯正と同様です。

  1. 歯型を取ります。患者の歯のかたちに合った装置を作るために石膏で歯型をとって歯の模型を作ります。歯の裏側は目で確認しづらく表面のかたちも表側に比べて複雑なので高度な技術と豊富な経験が必要になります。
  2. 歯にブラケットをつけます。作成した歯の模型を元につくった金属製のブラケットと呼ばれるワイヤーを通すためのボタンのような装置を歯につけます。基本的には全ての歯に一つずつです。しっかりと貼り付けるために薬剤で少し表面をザラザラにしてから歯科用のボンドでつけていきます。
  3. ブラケットにワイヤーを通します。それぞれの歯に貼り付けたブラケットにワイヤーを通していきます。
  4. 約1か月ごとにワイヤーの調整をしていきます。歯の動きを見ながら治療計画に沿って徐々にワイヤーの締め方などを調整していくことで歯並びを整えていきます。




4.代表的な裏側矯正装置の種類

裏側矯正用の装置は表側の場合とは違う特殊なもので様々なメーカーが製品を出しています。それぞれ特徴がありますが、どの装置を使うかよりもそれを扱う担当医にしっかりとした知識・経験があるかということの方が圧倒的に重要です。参考までにご紹介します。

4-1.stb(エス・ティー・ビー)

日本における裏側矯正の第一人者であり、世界舌側矯正歯科学会の会長も歴任した竹元京人先生が開発した装置です。装置が小さく違和感が少ないのが特徴です。

4-2.クリッピーL

摩擦を極力少なくすることで歯の移動を効率的に行いつつ治療中に起こる痛みを軽減するセルフライゲーションシステムを採用した装置です。

4-3.kurz 7th(カーツ 第7世代)

stbなどと比べて装置は若干大きいですが、豊富な実績があります。

4-4.インコグニート

歯の裏側は外から見えにくく、また歯表面のかたちも表と比べて複雑のためその人にピッタリ合った装置を作るのは非常に難しいです。インコグニートはコンピュータシミュレーションと3Dプリンタを応用することでその問題を解決できます。

しかし、いずれにせよ最終的な仕上げには歯科医師の経験が必要であり、装置の作成や一度装置が破損したときの修復に時間がかかるなどデメリットもあります

5.裏側矯正のデメリット

5-1.費用が高い

基本的に表側からの矯正に比べて費用が高いです。ワイヤーを使った矯正の料金はほとんど技術料ですので、難易度が高く手間もかかる裏側の矯正は必然的に高くなります。それぞれの治療法の相場は以下の通りです。

  • 表側矯正:60万~80万
  • 裏側矯正:100万~150万
  • マウスピース矯正:50万~100万

◎ ハーフリンガル

上顎は裏側、下顎は表側にワイヤーをつけるという方法もあります。下顎は笑ったときでも上顎に隠れてあまり目立たないため審美的には十分な効果があります。費用が90万~120万になるので負担が軽くなるというメリットがあります。

5-2.発音がしづらい、舌を傷つけやすい

歯の裏側についている装置に舌が当たりやすいため最初のうちは発音や滑舌に影響が出やすく、舌を傷つけることも多いようです。しかしそのような症状が頻繁に出るということは舌の位置が正しくないということでもあります。

最初にメリットとしてご説明したように歯並びが悪い原因の一つである舌癖を正していくうちにこういった症状は気にならなくなっていきます。

5-3.十分な知識・経験のある歯科医院が少ない

裏側矯正は専門性・難易度が高く歯医者さん選びが特に重要になってきますが、比較的新しい分野であり、更に日本特有の問題として自由診療となる治療は普及が遅れる傾向にあるため、裏側矯正が得意な歯医者さんはまだまだ少ないというのが現状です。

6.裏側矯正が得意な歯科医院の選び方

6-1.舌側矯正歯科学会の認定医をもっている

繰り返しになりますが裏側矯正は専門性の高い分野です。矯正歯科学会の認定医だけでなく、舌側矯正歯科学会の認定医資格も持っていると良いでしょう。

実績のある代表的な学会は日本舌側矯正歯科学会、世界舌側矯正歯科学会、ヨーロッパ舌側矯正歯科学会です。日本舌側矯正歯科学会の公式HPでは全国の認定医をもつ先生を検索できます。

6-2.裏側矯正の症例数が豊富

矯正治療全体の経験が豊富なのはもちろん、その中で裏側矯正の症例数がどれだけあるか確認しましょう。

専門医であればHPなどで公開していることも少なくありませんが、わからないようであれば無料相談のときなどに直接聞いてみても良いでしょう。本当に実績があれば快く教えてくれるはずです。目安としては500症例以上あると安心です。

7.まとめ

お話した通り裏側矯正は装置の見た目が気になるという方の悩みを解決してくれるおすすめの方法ですが、まだまだ日本では知識・経験豊富な専門医が少ないのが現状です。

絶対に失敗しないための矯正歯科の選び方12のポイントも参考にしながら是非信頼のできる先生を探して下さい。



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